血圧が下がらないのはジェネリックだからと主張
最近血圧が下がらないのはジェネリックに変更したからではないかと主張する高齢の患者さん。ジェネリックに関してはK社の事故やN社の業務改善命令などが報道されたため不安視するのはもっともである。
しかし、服用しているのはオーソライズド・ジェネリック(AG)のイルベサルタン錠50mg「DSPB」。AGは先発品と同等ではなく、同一品だ。しかも変更して3年経つ。
先発品のアバプロのときは調子が良かったと主張。AGについて説明しても聞く耳をもってくれない。
患者さんのアドヒアランスは良くない。家庭血圧は測定しない、生活習慣は改善しない。血圧が下がらないことを医師にも伝えない。やるべきことは他にあるのだが、とにかく先発品がよいとの一点張り。
説得はあえてしない
こういった先発品原理主義の方には無理な説得は悪手であると考える。
理由は以下の3点。
(1)時間がかかる
(2)エネルギーを消費する
(3)プラセボ効果は期待できる
特に安心させることで(3)が期待できるため、一旦は先発品に戻して様子を見てもらうようにしている。
モラルハザードとVBID
このままではただの愚痴になるので医療政策的にどのような状態か考察し、どうすれば解消できるか妄想してみる。
モラルハザードが生じている
モラルハザードとは、保険を持っているなどの理由で本当の価格に直面していない場合に、それによって人間の行動が変わり、本来必要としているサービスよりも多くの量のサービスを希望してしまう現象のことを言います。ー津川友介著「世界一分かりやすい医療政策の教科書」P17
要するに支払う金額が少ないので、高い薬を求めてしまうこと。ついでにシップや風邪薬を処方してもらうのもこのパターン。特に自己負担の少ない高齢者ではよく見られる傾向である(合理的な人間では誰でも認められる傾向なので悪いわけではない)。
ジェネリックと先発品の価格差が小さければ先発品を選択する気持ちは理解できる。しかし医療保険的には厳しい。
価値に基づく医療保険(VBID)を導入してはどうだろう(妄想)
VBIDは、医療サービスがもたらす「価値(=健康上のメリット)」によって自己負担割合を増減することで、患者の受療行動によい影響を与えるという特徴をもった医療保険のことを指します。ー津川友介著 「世界一分かりやすい医療政策の教科書」P53
仮にジェネリックを選択したときは1割負担だが、先発品を選択したときは5割負担にすれば良いと考える。どうしても先発品が希望の場合は高い金額を支払って選択すればよいだろう。
科学的根拠が乏しい薬はOTC類似品などは自己負担割合を変化させることで、不要な処方が減るかもしれない。現在はほとんどレセコンで処理するので、薬ごとに自己負担割合を変化させることは容易だろう。
参考資料:津川友介著 「世界一分かりやすい医療政策の教科書」